「吹雪の宵」

この写真を撮ったのは3月6日。気温は低いが内陸部に比べれば雪の少ない岩泉でも、西高東低の冬型の気圧配置が崩れる早春の頃には、こんな「春の大雪」に遭遇することもある。

この日も午後から急に雪が強くなり、長閑な早春の雰囲気は、瞬く間に厳しい真冬の景色へと逆戻りしてしまった。宵が迫り、景色が群青色に沈んでゆく中、茂市行き687Dが音もなくホームに滑り込んだ。だが、誰も乗らず、誰も降りない。雪まみれのディーゼルカーと、踏み跡の全くない白いプラットホーム。わずか20秒ほどの停車時間が、天国的な長さに感じられた。