2002春 2 房総早春賦　秋と春のあいだ　小湊鉄道　その1 2

房総早春賦　秋と春のあいだ　小湊鉄道

困ったことに、「冬」というと、人は条件反射のように雪景色を連想してしまう。もちろん、かく言う自分も、人のことをとやかくは言えない。「雪のない冬など撮るに値しない」と、冬になると雪の少ない関東地方におさらばして、本当に「冬」らしい情景を求めて東北や北海道をさまよい歩くことが多かった。

だが、全てを白く冷たい雪の下に閉じこめ沈黙させてしまう北国の冬は、美しくもあるが、重苦しくもある。全く身勝手なもので、あんなに雪に憧れてここまでやってきたのに、雪にまみれて撮影を続けていると、次第に雪のない関東が恋しくなる。「たまには雪のない冬も撮ってみようか･････」　遠い北国で、雪のほとんど降らない小湊線の冬をふと想った。

北国の冬とは全く違った意味で、房総の冬は表情豊かだ。真冬であっても、淡い日差しの中でふっと寒さが緩むと、風景ははるか先のはずの春を先取りしたかのような表情を見せることがある。もちろん、そんな瞬間は長続きはしない。日差しが更に淡くなり夕闇が迫ると、風景は再び厳しい冬の気配の中に沈んでゆく。ふと辺りを見回すと、先ほどまで生き生きとしていた草木たちから生気が消えている。その様は晩秋のはかなさにも似ている。

畏怖すら感じさせる圧倒的な北国の冬とは全く違う、穏やかだがどこか陰と厳しさのある「秋と春のあいだ」の季節、再びカメラを手に小湊線を旅してみた。

「グラデーション　放射冷却の朝」
海士有木　Canon EOS1N HS　EF 17～35mm f2.8 L USM　RVP（FL-Wフィルタ使用） 2003.1.5

「飯給（いたぶ）」と並ぶ小湊鉄道の難読駅「海士有木（あまありき）」。日中は駅員が駐在するこの駅も、早朝はご覧のように誰もおらずひっそりとしている。上下の始発列車が通り過ぎた後、ようやく東の空が白みはじめた。

「空っ風　吹きさらしのプラットホーム」
海士有木　Canon EOS1N HS　EF 400mm f2.8 L2 USM　RVP　2003.1.5

晴天の多い冬の関東平野では、こんな乾いた冷たい風の吹く日も多い。日が高くなり、気温は徐々に上がっているようだが、風がある分寒い。

「氷の年輪」
上総三又～上総山田　Canon EOS1N HS　EF 17～35mm f2.8 L USM　RVP　2003.1.5

沿線には氷が張っている田んぼが幾つも見られた。氷に樹の年輪のような不思議な紋様が見られるのは、溶けたり凍ったりを何度も繰り返していたからだろうか？　冬の淡い陽光を受けて、氷の縁から小さな雫がぽたぽたと滴りはじめているが、この寒さでは夕方にはまた凍ってしまうことだろう。春はまだ遠い。

「春に備えて　上総川間」
上総川間～上総鶴舞　Canon EOS1N HS　EF 70-200mm f2.8 L IS USM　RVP　2003.1.5

上総川間駅近くの田んぼでは、畦の補修作業の真っ最中。田んぼに水が入るのはまだまだ先のことだが、春に備えての準備がもう始まっていた。

気がつくと風が止んでいる。空を見上げると、さきほどまで冴え冴えとしていた蒼穹が潤んでいる。

2002春 2 房総早春賦 秋と春のあいだ 小湊鉄道 その1 2

房総早春賦 秋と春のあいだ 小湊鉄道

「グラデーション 放射冷却の朝」 海士有木 Canon EOS1N HS EF 17～35mm f2.8 L USM RVP（FL-Wフィルタ使用） 2003.1.5

「氷の年輪」 上総三又～上総山田 Canon EOS1N HS EF 17～35mm f2.8 L USM RVP 2003.1.5

「春に備えて 上総川間」 上総川間～上総鶴舞 Canon EOS1N HS EF 70-200mm f2.8 L IS USM RVP 2003.1.5

2002春 2 房総早春賦　秋と春のあいだ　小湊鉄道　その1 2

房総早春賦　秋と春のあいだ　小湊鉄道

「グラデーション　放射冷却の朝」
海士有木　Canon EOS1N HS　EF 17～35mm f2.8 L USM　RVP（FL-Wフィルタ使用） 2003.1.5

「氷の年輪」
上総三又～上総山田　Canon EOS1N HS　EF 17～35mm f2.8 L USM　RVP　2003.1.5

「春に備えて　上総川間」
上総川間～上総鶴舞　Canon EOS1N HS　EF 70-200mm f2.8 L IS USM　RVP　2003.1.5