2 房総早春賦　秋と春のあいだ　小湊鉄道　その3 index

「腰折れ屋根（マンサード）の民家」
養老渓谷～上総中野　Canon EOS1N HS　EF 17～35mm f2.8 L USM　RDP3　2004.3.28

終点・上総中野に程近い線路端に、ちょっと変わった形の屋根の民家を見つけた。「腰折れ屋根（マンサード）」と呼ばれるこのタイプの屋根は、低コストで大きな伽藍を作るのに適しているため、畜舎などではよく見られるが、民家、しかも古い木造家屋でこういう屋根を葺いている例はあまり見たことがない。大きな屋根裏部屋は、以前は何に使われていたのだろうか？

裏の奇妙な三角屋根の建物も気になるが、こちらはどうも民家ではなく、お堂か何かのようだ。

「黄昏のでんしんばしら」
海士有木～上総三又　Canon EOS1N HS　EF 400mm f2.8 L2 USM　RDP3　2004.2.21

宮沢賢治の童話『月夜のでんしんばしら』に出てきそうな電信柱たちを見つけた。この辺りは近年住宅が増えて、少々窮屈な風景になってしまったが、それでもこうして地平へ向かってまっすぐに並ぶ彼らの姿を見ていると、本当に夜中に人知れず軍隊さながらの行進をしていそうな錯覚に陥る。

「六ツ目玉のシグナル」
五井～上総村上
Canon EOS1N HS　EF 70-200mm f2.8 L USM　RVP　2003.1.5

三方向からの道が集まって交叉するこの踏切には、ご覧のように目玉が６つもある警報機がついている。生き物のようにも見える奇妙なフォルムに惹かれて、カメラをセットして列車を待つことしばし。暮れはじめた空の中を、下り列車が駆け抜けていった。

「残照」
上総川間　Canon EOS1N HS　EF 400mm f2.8 L2 USM　RDP3　2004.3.28（2枚とも）

里見での交換が廃止されて以来、ロケーションのよい上総牛久以遠へ行く列車の本数は激減してしまった。特に休日ダイヤの惨状は目を覆うばかりである。自然、黄昏時のシャッターチャンスも少なくなる。この上総川間駅の場合、下りは15時54分のあとは17時21分まで列車はなく、上りは15時46分のあとは17時13分まで列車がない。撮影の途上で折角素晴らしい黄昏に巡り会っても、列車が来ないでは話にならない･････

３月末、日が延びてようやくダイヤと黄昏時がかみ合うようになった。まず17時13分、弱々しい残照に車体を輝かせながら、日中最後の上り五井行きが川間駅に到着。しかし誰も乗らず、誰も降りずに、そのまま発車。次いで17時21分、先の上り列車と隣の上総牛久で交換した下り上総中野行き最終が、車体を傾けながら奥の大カーブを廻ってプラットホームへ進入。だが、やはり誰も乗らず、誰も降りず、列車はそのまま出発していった･･････

遠い山の陰に太陽が完全に姿を消すと、急にしんしんと冷えてきた。本当の春がやってくるまでに、まだ幾度か霜が降りる日があるかもしれない。用意していた冬用のダウンに袖を通し、私は足早に立ち去った。

（おわり）

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「黄昏のでんしんばしら」 海士有木～上総三又 Canon EOS1N HS EF 400mm f2.8 L2 USM RDP3 2004.2.21

2 房総早春賦　秋と春のあいだ　小湊鉄道　その3 index

「黄昏のでんしんばしら」
海士有木～上総三又　Canon EOS1N HS　EF 400mm f2.8 L2 USM　RDP3　2004.2.21