日照時間の短い冬に、運転本数の極端に少ない岩泉線を撮るのは至難の業である。谷底まできちんと日が射す時間帯に走るのは、８時１分岩泉発の宮古行き６８４Dただ１本だけ。

この日、その６８４Dを待ちかまえていると、突如一寸先も見えないほどの猛吹雪に襲われた。ファインダーを覗くと真っ白。これではどうしようもない。一番大事な６８４Dの撮影に失敗しては元も子もないので、あまり時間はないが、思い切ってポイントを変えることにした。

カメラをセットし終わるとほぼ同時に、白くかすむ線路の彼方に、峠を下りてくる列車のヘッドライトが現れた。三陸地方は概して雪が少ないと言われているが、山の天気は本当に油断がならない。

（船坂 晃弘）