サイドの丸い窓が特徴的なモ510。揖斐・谷汲線の主役モ750よりさらに古い、大正15年生まれのこの古豪電車は、路面電車区間である岐阜市内線への直通急行として活躍し、昭和62年にはエバーグリーン賞を受賞した、押しも押されぬ名鉄600Ｖ区間（岐阜市内線、及び岐阜近郊の揖斐・谷汲・美濃町・田神線）のスターである。しかし、長らく3台体制で動いてきたモ510も、2000年10月に512号が廃車になり、現在では513号と514号の2両のみ。しかも、今では定期運用から外され、走っている姿にはほとんどお目にかかれない。折角訪ねていっても、黒野の車庫の片隅で昼寝をしていることが多かった。

だが、皮肉なことに、揖斐・谷汲線の廃止が近づき、3両しかないモ750だけでは「名残乗車」の客をさばけなくなると、谷汲線の増発便を中心にモ510が重連でかり出されることが多くなった。ロケーションに恵まれた谷汲線を颯爽と走るその精悍なフォルムに、私を含め多くのファンが魅了された。