第1章 空想の中の鉄道、再び 11/11
縦貫「最後」の春1 第1章 空想の中の鉄道、再び 11/11
縦貫「最後」の春1 |
| 空を真っ赤に焦がすような夕焼けの中を走るレールバスを撮りたいと思い続けていたが、ついに最後まですっきりと晴れてくれることがなかった。最後の年、ようやく巡り会えた夕焼け。薄雲がかかり、太陽も「赤」というよりは黄色っぽい感じなのが残念だが、同じ構図で狙った数カットの中で、これが一番自分のイメージに近かった。左側の林と中央の樹、太陽の配置を考え、何度も三脚の場所を移動させてやっと撮れた苦心の作である。 |
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| 坪川慕情。18時53分発、七戸ゆきの最終列車である。日の長い4月になると、黄昏の中をゆくこの列車を撮ることができた。空が美しい日は、どこよりもまず坪川に行きたくなる。私は迷わずこの場所を選んだ。 |
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坪川慕情。この駅を見ていると、本当に空が深く、美しく感じられる。あいにくの薄曇りであったが、日が落ちると雲のひだのひとつひとつが赤や紫に彩られ、やがて神秘的なダークブルーに沈んでいった。最終列車が通り過ぎたあとも、私は夢中でシャッターを切り続けた。人気のない駅舎の上に、一番星が輝いていた。 （第1章 おわり） |
